そういや忘れていた 帯広の店『長寿庵』
訪れたことを忘れていたけども
ふとしたことで
思い出す店というのがある。
帯広『長寿庵』もその一つ。
だいぶ前の話なので、記録的な感じではなく、ちょっとした
回想録のように書いてみる。
帯広駅から徒歩10分。繁華街のど真ん中にあり、
駅前のホテルなどからもすぐに行ける。
木造の古臭い、まぁ味があるとも言える二階建ての店は
氷点下10度以下、冬の帯広の中で、寒風に縮こまっているように見える。
とにかく帯広の店は、閉まるのが速い。
豚丼の有名店『ぱんちょう』は19時に閉店。
『とん田』は18時に閉店する。
そんな馬鹿なと思うなら検索してみるといい。
帯広に到着した旅行者は、17時にホテルにチェックインしたら
間髪入れずに食事に行かなければいけない。
間違っても6時のNHKニュースなどを見てはいけない。
サザエさんを見てしまうと確実に食べられない。
帯広というのはそういう街だ。
しかしこんな冷酷な街にも、一握りの愛は残っている。
もりあきが愛してやまない料理店『ゆうたく』は、なんと
夜21時という深夜まで営業しているのだ。
この時間には帯広の市民の97%は就寝しているというのに。
ありがたいことである。
だが、もし、それでも、万が一、
交通事情が良くないために、21時以降に帯広に到着した場合。
または、
あろうことかモヤさまに続いて、
行列の出来る法律相談所を視聴してしまった場合。
グルメな観光地において、食事の楽しみというものは望むべくもなく、、
あえなくセイコーマート行きとなる。
時間を無駄にしてはいけない。
そんなことは、わかっていたはずなのに。
私は残念ながら、仕事が忙しく、帯広市街に到着した時には
23時だった。
お年寄りであれば、そろそろ起き出すぐらいの早朝である。
こんな時間では食堂どころか、町の中には人っ子一人いない。
帯広への出張が両手両足と両耳を足したぐらいの数である
私が、そう考えるのも無理はないだろう。
だが。
スマートフォンを操作すると、信じられないような情報に触れた。
なんと夜中の23時に開店している店が、帯広に存在するのだ。
ブラフではない。真実だ。
しかも日をまたいで、25時まで開店しているという。
夜行性のエゾシカ相手に営業しているのだろうか?
前置きが長くなったが、私はその店に向かって車を走らせる。
適当な駐車場に車を放り込むと、スマートホンのナビに従って歩き
すぐに店を見つけることができた。
帯広『そば 長寿庵』
店の中は、人間の先客が何名かいた。おそらくは全員、
外の世界から来た人間だろう。時差ボケのためにこのような深夜に
食べに来たに違いない。
蕎麦屋という業態は電子情報網より察していたので、蕎麦を注文する
つもりだった。バナナで釘が打てるどころか、新鮮なペンギンでも
凍り付くほどに寒い帯広にいるのだから、暖かい蕎麦がいい。
だが、メニューは私が思っているよりもはるかに充実していた。
豚丼蕎麦セット 900円
そのたまらなく地元臭が立ち昇るセッティングを、私は注文していた。
闇夜に浮かぶ月(生卵の事ではない)に突き動かされたように。

豚丼蕎麦セット 900円
帯広の流儀として、豚丼に山椒をふりかける。
口に運んだ私は、呻いた。
「(これは、全く問題ない)」
炭火で焼いたわけじゃない。特別に上等なわけでもない。
だが、普通以上の肉を、フライパンで、絶妙な味付けの甘辛い豚丼たれに
からめている。これは、
これは、一流店の味ではないけども、
間違いなく帯広の豚丼の味だ。
肉厚で、甘く、どっしりとした豚肉の風格にピリッと効いた山椒。
保温焼けなど全くしていない旨いごはんが、たまらない。
そして、これも特に出来合いのものではない、普通に美味な蕎麦と共に
味わう。そう。夢中になって。
ああ、これは。
餓えた労働者を救済するために神が用意してくれた憐みか。
<マタイの福音書 第15章>
イエスは弟子たちに「豚肉はいくつあるか」と尋ねられると、
「七つあります。また小さい魚が少しあります」と答えた。
そこでイエスは群衆に、地にすわるようにと命じ、
七つの豚丼と魚とを取り、感謝してこれをさき、弟子たちにわたされ、
弟子たちはこれを群衆にわけた。
食べた者は、女と子供とを除いて四人であった。
(うち一人はダブル大盛りであった)
主よ、空と大地の恵みに感謝します。
合掌。
エルカンターレ。
池田大作。
とにかく何でもいい。何かよくわからないものに感謝します。
帯広でどんなに仕事が遅くなったとしても、
豪雨で橋が決壊したとしても(笑えない)
このお店は開いている。
それは、勇気に変わる。
社畜精神を加速させる勇気に――。
完
ふとしたことで
思い出す店というのがある。
帯広『長寿庵』もその一つ。
だいぶ前の話なので、記録的な感じではなく、ちょっとした
回想録のように書いてみる。
帯広駅から徒歩10分。繁華街のど真ん中にあり、
駅前のホテルなどからもすぐに行ける。
木造の古臭い、まぁ味があるとも言える二階建ての店は
氷点下10度以下、冬の帯広の中で、寒風に縮こまっているように見える。
とにかく帯広の店は、閉まるのが速い。
豚丼の有名店『ぱんちょう』は19時に閉店。
『とん田』は18時に閉店する。
そんな馬鹿なと思うなら検索してみるといい。
帯広に到着した旅行者は、17時にホテルにチェックインしたら
間髪入れずに食事に行かなければいけない。
間違っても6時のNHKニュースなどを見てはいけない。
サザエさんを見てしまうと確実に食べられない。
帯広というのはそういう街だ。
しかしこんな冷酷な街にも、一握りの愛は残っている。
もりあきが愛してやまない料理店『ゆうたく』は、なんと
夜21時という深夜まで営業しているのだ。
この時間には帯広の市民の97%は就寝しているというのに。
ありがたいことである。
だが、もし、それでも、万が一、
交通事情が良くないために、21時以降に帯広に到着した場合。
または、
あろうことかモヤさまに続いて、
行列の出来る法律相談所を視聴してしまった場合。
グルメな観光地において、食事の楽しみというものは望むべくもなく、、
あえなくセイコーマート行きとなる。
時間を無駄にしてはいけない。
そんなことは、わかっていたはずなのに。
私は残念ながら、仕事が忙しく、帯広市街に到着した時には
23時だった。
お年寄りであれば、そろそろ起き出すぐらいの早朝である。
こんな時間では食堂どころか、町の中には人っ子一人いない。
帯広への出張が両手両足と両耳を足したぐらいの数である
私が、そう考えるのも無理はないだろう。
だが。
スマートフォンを操作すると、信じられないような情報に触れた。
なんと夜中の23時に開店している店が、帯広に存在するのだ。
ブラフではない。真実だ。
しかも日をまたいで、25時まで開店しているという。
夜行性のエゾシカ相手に営業しているのだろうか?
前置きが長くなったが、私はその店に向かって車を走らせる。
適当な駐車場に車を放り込むと、スマートホンのナビに従って歩き
すぐに店を見つけることができた。
帯広『そば 長寿庵』
店の中は、人間の先客が何名かいた。おそらくは全員、
外の世界から来た人間だろう。時差ボケのためにこのような深夜に
食べに来たに違いない。
蕎麦屋という業態は電子情報網より察していたので、蕎麦を注文する
つもりだった。バナナで釘が打てるどころか、新鮮なペンギンでも
凍り付くほどに寒い帯広にいるのだから、暖かい蕎麦がいい。
だが、メニューは私が思っているよりもはるかに充実していた。
豚丼蕎麦セット 900円
そのたまらなく地元臭が立ち昇るセッティングを、私は注文していた。
闇夜に浮かぶ月(生卵の事ではない)に突き動かされたように。

豚丼蕎麦セット 900円
帯広の流儀として、豚丼に山椒をふりかける。
口に運んだ私は、呻いた。
「(これは、全く問題ない)」
炭火で焼いたわけじゃない。特別に上等なわけでもない。
だが、普通以上の肉を、フライパンで、絶妙な味付けの甘辛い豚丼たれに
からめている。これは、
これは、一流店の味ではないけども、
間違いなく帯広の豚丼の味だ。
肉厚で、甘く、どっしりとした豚肉の風格にピリッと効いた山椒。
保温焼けなど全くしていない旨いごはんが、たまらない。
そして、これも特に出来合いのものではない、普通に美味な蕎麦と共に
味わう。そう。夢中になって。
ああ、これは。
餓えた労働者を救済するために神が用意してくれた憐みか。
<マタイの福音書 第15章>
イエスは弟子たちに「豚肉はいくつあるか」と尋ねられると、
「七つあります。また小さい魚が少しあります」と答えた。
そこでイエスは群衆に、地にすわるようにと命じ、
七つの豚丼と魚とを取り、感謝してこれをさき、弟子たちにわたされ、
弟子たちはこれを群衆にわけた。
食べた者は、女と子供とを除いて四人であった。
(うち一人はダブル大盛りであった)
主よ、空と大地の恵みに感謝します。
合掌。
エルカンターレ。
池田大作。
とにかく何でもいい。何かよくわからないものに感謝します。
帯広でどんなに仕事が遅くなったとしても、
豪雨で橋が決壊したとしても(笑えない)
このお店は開いている。
それは、勇気に変わる。
社畜精神を加速させる勇気に――。
完
スポンサーサイト
| 外食とか料理とか食関係 | 19:30 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑