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Way to the BLUE 3話

(3)


三葉堂でケーキを買い、木桧みずほと月方万里は
おそらくふたえがいるであろうRailwayへと向かった。

雑談などしながら。寂れた商店街を海の方へと向かう
ように歩いてゆく。Railwayはそちらの方向へ行くとある。

「それで、昔やった話を覚えてると混乱しちゃって、
海のモンスターとか超強いの。最初死にまくって」
「うんうん」
「ナイトにジョブチェンジしたらなんか弱いから戦士に
戻したりしたけど、風水師のほうが強いんだよね
ハッキリ言って。でも風水師3人とかひどいでしょ」
「うんうんひどいねー」
「やっぱ見栄え的にさ。前衛キャラ居た方が安定するし
バランスは良いんだけどさ。バランスを取るか一発を
取るか難しいところだよね」
「うんうん難しいねー」

主に喋っているのはみずほの方で、万里はうんうんと
相槌を打つのに終始する感じだが。
実際、万里はゲームをやらないのでその辺の話は
まるでわからなかった。

「あ、そうだ。みずほちゃん昨日の『アジサイの涙』見た?」
「え? あーごめん見てないわ」
「ほんとー? 見ればよかったよー。ヘルナンデス先生が
車を運転してるときに熊をひいちゃうんだけど、すぐに
自分の診療所に運んで手当するの。そしたらその熊が
あの箕輪絵里香っていう女の人のペットで、一年半ぶりに
再会したんだよ」
「あ……そうなんだ。へぇー」

夜のドラマのことを饒舌に話しはじめた万里の言葉を、
みずほはあくびをしながら聞いている。

もうすぐRailwayに着く。あの古い木造の店が目の前に
近づいてきた。

「でね、ヘルナンデス先生が尋ねるの。『あなたは、なぜ
ここにいるのですか』絵里香がね、先生の手をこうやって
ぎゅって握りしめて『水のようなものです。あたしの心は、
あなたへずっと傾いたままだから、どんなにさまよっても
そこに流れ着いてしまう……』って! 
二人はお互いの肩をそっと抱いて、涙を流すの。
ちょっとグッときたんだよーそれで私、夢中になってたら
冷凍庫にスイカ入れてたの忘れててカチンコチンに……
……みずほちゃん? どうしたの?」

「……」

みずほは、Railwayの店内に入ろうとせずに、窓の方から
店内を見ていた。

「……?」

教室でそうしたように、みずほの視線を追いかける。
薄汚れた北国特有の小さな窓の向こう。
お店の中では、藤ノ木ふたえと誰かが……。

「だ、だ、抱き合ってる! みずほちゃん、あれ! 何!
あれ誰!? ふたえさんの……あ、ちょっと
みずほちゃん!?」

いきなり早足で歩き出し、持っていたケーキをその辺に
放り投げたみずほを見て、万里は泡を食った。

なんだか――とても、激高している。

「みずほちゃん、ちょっと待って! 今はちょっと様子を」
「ちょわーーーーーーーーーーーーーーーつ!!」

  バーーーーーーン!!

勢い良くドアが開くというか、蝶番ごと吹っ飛ぶ。

右足でドアを蹴り飛ばした勢いのまま、みずほは店内に
なだれ込んでいった。

その後を万里も追ってゆく。

その次に見えた光景は、何となくスローモーションの
ようだった。

「ちょわーーーーーーーっ!!!」

吹っ飛んだドアが何かに当たってガラス破砕音を
響かせ、殆ど同時にみずほの身体が宙に舞い上がり、
その一瞬後には、得体の知れない男のこめかみを
茶の学生靴が蹴り抜いていた。

明快に頭を蹴り抜かれ、捨てられた人形のように床に
叩きつけられる謎の男。

みずほの怒りは相当な物のようだった。
ゴミのように倒れ伏した男の襟首を掴んで、

「なにしてんのよあんた!! あたしの姉に向かって
何してんの何を!! 下品な男がふたえ姉様の肩を
抱くなんて流刑!! 流刑よ!!」

思い切り気を失っている男の首を絞めようとする
みずほを、万里は後ろから羽交い締めにしてなんとか
取り押さえていた。

「みずほちゃん死んじゃうよその人! 既にだいぶ
死んでるけど!」
「死ねばいいのよこのスケベ大使!! あたしの
ふたえ姉様を汚らわしい手で汚すなんてどこの
発情ペテン師浮浪者!? 警察に突き出してやるわ!」
「うああ、みずほちゃんが『あたし』とか言い出してる」

あたしと言い出すのは品がないので、なるべくやめると
言ってたのは本人だったのだが。

本気で怒り狂ってるらしい。顔が真っ赤だ。

しかし当のふたえは、むしろ青ざめた顔をしていた。

「え? みずほちゃんが帰ってきたの? 今のすごい
物音はなに? 高浩くん? 何があったの?」

ふたえは目が悪く何も見えないため、起こった状況が
理解できずおろおろと困り果てていた。
それを何か変な風に解釈したらしい。みずほは。

「高浩? わざわざ名前を名乗るなんてこの暴行魔、
相当狂ってるのね。いいわ。警察の手を煩わせる事もなく
あたしが独自の裁判で有罪か死罪か流刑罪か決めて
あげるから。判決。川流し」
「海でもないんだ……」

万里がぽつりと呟くが、それに意味はない。みずほはやると言ったら
必ずやる子だ。それが例えバカでも。

呆然としたまま、ふたえが手をさまよわせる。

「みずほちゃん、その子は違うの。その子はね……」

みずほは聞いてなかった。最初から何も聞いていなかった。

「ふたえ姉さま、もう安心して下さい。この性欲で脳の
99.7%が構成されたような変態オブ・ザ・イヤーは
あたしの手で始末しましたから。裏の焼却炉で早速
焼いてきます! 絞めて締めるしめしめ始末よラララー♪」

足を持って男を引きずろうとしたみずほを、万里は
くい止めようとした。というか小さい万里も引きずられる。

「待ってってばー! みずほちゃん落ち着いてー!」

ふたえも手を伸ばす。這うようにして、その方向へ。

「待って! みずほちゃん! 話を聞いて。その子は私の……甥
なの!」
「ふたえ姉さまのおい!? 万里、おいって何!? 呼び声!?」

真顔で聞いてくる。万里は苦笑いして答えた。

「みずほちゃん……姉妹の子供ってことだよー」
「子供を作りにきたの!?」
「落ち着いてみずほちゃん! 意味がわかんないよ!」

ふたえは、混乱する二人がどこにいるかわからなかったが
とりあえずそこにしゃがみ込んでいた。すぐ近くにいるであろう
高浩の身体を探しながら言う。

「高浩くんはね、私の幼なじみと、お姉ちゃんの遺骨を
ここまで持ってきてくれたのよ。東京から。失礼なことは
しないでね。お願いだから」

失礼かどうか以前に、みずほが高浩の背中を両足で踏みつつ
バランスを取っている状況は見られなくて本当に良かった
だろう。

見たら多分、ふたえは倒れる。

「この変態が?」

みずほが指を指す。真下で気を失っている青年を。

「彼は私の……姉の子なの。お姉ちゃんを常葉町へ
連れてきてくれたの。私が行けないから。私が……
こんな風だから」

みずほはちょっと考えた後に、ゆっくり足をどけた。

「(高浩?)」

みずほと万里が、同時にその名前を読む。心で。

ふたえはようやく高浩の身体を見つけた。白く細い手で
気絶した高浩の頭を抱き寄せ、そっと髪を撫でた。

みずほもようやく、背中から下りる。

「私にとって、誰よりも大事な人の子なの」

ふたえの長い髪が揺れていた。
みずほは、どこかつまらなさそうにそれを見ている。

万里は気づいた。

Railwayのドアから風が吹き込んでいるんだ。
壊れたドアから夏の夜の風が。

海の薫りを纏った風が。
静かにRailwayを揺らすのだった。

見つめていた。

みずほはうつぶせに眠る彼の背中を、
面白くない表情でじっと見つめていた。

まるでそこに、何かが見えるかのように。ただ、じっと。

(3)終
(4)へ続く
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| 連続小説 Way to the BLUE | 11:29 | comments:3 | trackbacks(-) | TOP↑

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| | 2007/08/12 23:11 | |

ご無沙汰しております。
ひさびさの作品を拝見させていただいております。
いや~
RAILWAYと空を舞う翼引きずり出してきたくなったです。
しかし・・・ひとえねぇさん・・・
では

| かげ | 2007/08/14 21:53 | URL | ≫ EDIT

そうですねー確かに。某氏からのご指摘通り!
修正しました。

しかし・・・

・・・あ、まぁ、いいでしょうw


ご指摘ありがとうございました。

| もりあき | 2007/08/15 00:11 | URL |















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