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Way to the BLUE 14話

(14)



「みずほちゃんは本当はすごいんだよ。どんなことをやっても
誰よりも上達が早いし、臆病でもないし。それに……」

いつか、どこかで。

万里はそんなことを言った記憶がある。

いつか、どこかで。
ただ、それは嘘ではない。決して嘘ではない。間違いなく真実の
ことだった。万里は、彼女が特殊な才能を持っているということも
知っていた。

いつからか、覚えていないほどの過去に。二人は出会い、姉妹の
ように育てられてきた。早く生まれていたみずほが姉だった。

万里は思い返す。一番古い記憶。

みずほとゾウのぬいぐるみを取り合って、ぬいぐるみを破いて
しまった時。Railwayのふたえにぬいぐるみの修繕を頼みに行った。

「覚えているわ。ゾウのももちゃんね。おめめが取れていたわ」

厨房から、ふたえが話に割り込むように答えてくる。
何か野菜を切るような、サクサク、トントンという包丁の音と一緒に。

万里は頷いて、しかし首を振った。その時に思ったことを考えて。

ただ泣く万里と、すぐにふたえの元に走ったみずほ。
万里はどうしても、そのことを思い出してしまう。

「私、みずほちゃんに一つぐらい勝ちたかったんです」

唯一、勝っていたことがあった。

「それは、私にはお父さんがいたから」

万里は、自分自身の言葉に寒気を感じた。相手が高浩だから、
こんな話が出来る。

醜い話だ……。

ふと、厨房を見た。高浩も。不思議と、何の音もしない。

先ほどまで聞こえていた、野菜を切る音も。
万里は意に介さず続けた。

「お父さんは病気のお母さんの幼なじみで、ずっとお母さんの
病気を治そうとして、仕事のお金もみんな治療費にしているん
です」
「成果はどうなの?」
「私を生んだ頃が一番良かったみたいでした。その前は一時、
昏睡していたそうです。その時の治療費も莫大にかかったみたい
で、お父さんがいなかったら私は、この世にいません」

そりゃあそうだろうけど。

……と、高浩は言いたかったが。口を挟むのは無粋だ。冗談話
ではない。今も苦しんでいる。

万里はそんな彼の胸中を読みとって話しているわけではない。
同情されたいわけでもない。

「お父さんは偉いな。線の細い、気の優しい人に見えたけど」
「私のお父さんに会ったことがあるんですか?」

意外だった。高浩と月方浩一郎との接点。

「お墓に納骨するときに、会ったよ」

それでやっと思い出す。彼が何故来たのか。
実の両親を常葉町の土に帰すためだと。

「すみません」
「いや、いい。亡くなった人のことは、もういいんだ」

多分言われ馴れたのだろう。その様子に戸惑いはない。
万里は、少し安心した。

「……私にとって、お父さんは自慢です。お母さんは、頼りに
ならないとか、いつも必要なときにいてくれないとか、そんな
ひどいことばかり言いますけど、お父さんは私にとって、
何よりも自慢できる大きな宝物です。みずほちゃんも、持って
なかった宝物です」
「みずほも持ってなかった?」

「あの当時、みずほちゃんのお父さんとお母さんは別れていた
らしくて、常葉町にお母さんが来たのも一人だったんです。
おなかのなかにみずほちゃんがいたそうですけど。だからあの時、
みずほちゃんはお父さんの顔も知らなかった。私にはそれが、
出来のいいみずほちゃんへの唯一の自慢だった……」

ひどい話だ。結局、それが……。

「私自身も、父親をそんな風に見ていた。いつもそばにいないけど、
立派なお父さんっていうだけで嬉しかった。
結局は、私達二人とも父親の姿をロクに知らなかった。
でも、今でもイメージは残ってるんです」

「お母さんとのケンカの原因は、お父さんへの悪口、か」
「……そうです。くだらないことですけど」

重苦しさを感じた。

下らないことであるとは知っている。
ただ、それは理解されなくとも良い。

自分の弱さが生み出した幻影に過ぎない。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



木桧みずほは、食器を一人片づけていた。

時々携帯を気にしながら。そして、一時からやってる芸能人の
お昼のサイコロトーク番組を耳に入れながら。

「この雨だっつーのに、絵理菜さんのとこまでわざわざ遊びに
行ってるんじゃん。皿洗いさせておいて、よくもまぁ平気な顔で
遊びに行けるよホント」

皿洗いをさせられているのが、昼間で寝ていたペナルティだとは
考えないみずほである。

「でもまぁ、雨だし。静かな一日を、長く満喫できるわ。ゲーム
三昧で」

雨の日は、余計な来客も少ない。

例えば一番余計な来客というのは、機械の病気に取り憑かれた
悪質なマーフィーズゴーストの一つである先輩だが、それ自体が
正体不明の存在であるように、雨の日は外に出ない。

学校も休んでしまうのである。

「変人の考えることはよくわかんないね」

河井智恋がこれを聞いていれば、変人ではなく天才だと猛反発
するか、もしくは奇人変人の天才であるアインシュタインと同列に
並べたことを誇示するか、二つに一つだ。

正直、どっちでもいいしどうでもいい。グレーターデーモンでも
召還してくれるんだったら少しは役に立つのだが。

と、ゲームのことをリアルに当てはめて考えてしまうのは、かなり
危険思想であるようだが。

「……」

ふと、食器を洗う手が止まった。
泡だらけのスポンジを、見下ろしたままで。

思い出したのは、父親のことだった。

今もこんな鈍色の空の上。雲海を渡る船の船長を勤めている
のだろうか。それとも地球の裏側で、日本の夢を見ているのだろう
か。

ゲームの話に付き合ってくれる相手は、父親か、河井のおばさん
ぐらいだ。先輩とは会いたくないが。

「たまには帰ってこいよなぁ……」

陽気で気さくな父親。別れた母親を捜して旅をしまくったという
変な父親だが、あの日。Railwayに突然その父親が現れたときに、
みずほにとって欠けていたものがやっと埋まった。

あの日。

父親は突然現れた。ぬいぐるみの修理をしてもらいに
Railwayを訪れたみずほの前に。
みずほという子供がいることさえ知らない父親が。

その時の喜びは鮮明に覚えている。

Railwayのドアを開けて、ゆっくりと入ってきた父親の声を。

「Railway、行こうかな。これ終わったら」

皿洗いを適当に切り上げる算段をつけて、みずほはそう呟いた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「なるほど。それで出ていったのね」

外を眺めれば、暗い海に降り続く雨。
悲しげな色をした大洋を、絵理菜はぼーっと見つめている。

あまり話を聞いていない様子の彼女に聞こえるように、美砂は
ため息をついた。

月方家のダイニングである。

「はぁ……。謝りなさいよ。万里はしっかりしてるようで、繊細なん
だから」
「……なにを?」
「だから、万里は父親を馬鹿にされるのが嫌なの。万里にとって
お父さんの存在はものすごく大きなものなの」
「こーちゃんがそんなすごい人だなんて、言えない」
「言ってあげなさいよ。嘘も方便じゃない」
「美砂ちゃんも嘘だってわかってるんじゃん」
「いやだからそうじゃなくて……ああもう。つまり、万里を怒らせて
絵理菜は大丈夫なわけ? ご飯はどうするの」

そう言われて、絵理菜は黙り込む。

立て付けの悪い木造家屋のダイニング。ちょっとした風でも家が
軋むような気がする。今は、どこか乾いて聞こえる雨音しか
響かない。曇った窓の向こうに広がる海を眺めていた絵理菜は、
美砂の方を振り返った。

万里がいない人生など考えられやしないだろう。
ある意味で万里は、酸素と同じぐらい重要な人なのだから。

絵理菜にしては少し長く考えて、やがて。

「有沢浩樹くんが、高浩くんになって帰ってきたの」
「……意味が分からないんだけど」
「だから、万里と結婚してくれないかなぁ」
「……は?」

絵理菜は、そして笑顔になった。

「万里がいっちばん怒ったのはね、高浩くんをお婿さんに
しようって言った事なの。万里と高浩くんは、きっとお似合いの
かっぷるになると思うよ。すごく大丈夫だよ」
「いや何が大丈夫って。何でそうあんたは……」
「だめかなぁ。すっごくお似合いだと思うけど。でも絵理菜と浩樹君
ほどじゃないけど。あと絵理菜ととーらちゃんほどじゃないけど。
間違ってもこーちゃんみたいなのと結婚しちゃだめだ」

好き放題なことを言う。
こんだけ無茶苦茶言われれば万里も嫌になって家を飛び出すに
違いない。

妻が旦那の悪口を言うなんて、正直言っていつも当たり前にある
ことだ。こんなのも、絵理菜にとっては挨拶みたいなものだろう。
万里がそういう話を間に受けてしまうのは困ったものだが。

美砂は、持ってきた文化鍋をちらっと一瞥する。

「万里は今どこに行ってるのかな。せっかく、おでん作ってきて
あげたのに」
「あ、食べる」
「食べるな」

遅すぎる朝食を食べ終えたばかりの絵理菜の手を、ぴしっと
叩き伏せた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


15時。

順調に飛行していた太陽が浮力を失い、落下軌道を取る。
厚く伸びた暗雲の先にはそんな光景があるのだろう。だが、それは
見ることが出来ない。

人には翼がある。

目には見えないが、人には翼がある。

その翼をはためかせれば、見えない世界すら見渡すことが出来る
だろう。空想ではなく、夢想ではなく、現実の中で。

人には翼がある。それは見えない。しかし、そこにある。

木桧みずほは空色の傘を、少しだけ揺らした。小さな空から
薄い光を感じる。そこに太陽はあるのだ。

なぜ見えなくなるのだろう。

子供の頃は誰の背中にも見えた翼。

大人になると、それは見えなくなってしまう。
それこそが『大人になる』ということなのか?

翼の意味するところを、父親に尋ねたことがある。

人は夢を実現することが出来る。
その手の中に夢がある。
それを信じ続けている人の背中には、翼が見えるという。

「お父さんはもう夢を掴んだのにね」

Railwayに向かう道筋。目をつぶっても歩ける。

夢はいつでも掴むことが出来る。
だが、みんなそれを忘れてしまう。

いつしか、そのことに臆病になってしまう。どれだけ口の中で
呪文のように唱えても、心の底から信じることができなくなる。

美砂には『見える』。
今日の雲の上にある太陽のように、曖昧なものではなく。

冗談や幻覚ではなく、本当に『見える』のだ。

父親にそれを告げたのは中学の頃だった。父親の背中には
光輝く翼が片方だけ見える、と。

それを告げられた父親は、ひどく悲しい顔をした。
子供が錯乱したと思った、というわけではない。

父親には心当たりがあるようだった。それが見えた人がほかに
二人いたと言った。一人はこの世にいない。

もう一人は、『この世界にいない』……。

だから、みずほには見えなくても良かったのだと言った。
何しろ自分の翼は、自分には見えないのだから。

「自分の幸せだけ見つめて生きなさい。決して、誰かに託す人生で
ないように」

遠くを見ているような父親の瞳。
幼いみずほの頭を撫でる、大きな手。

「いつか、パパ以外の人に巡り会うかもしれない。翼を持つ人に」

そう言った父親が、なんとなく泣いているように見えた。


あれから数年が経った。

「有沢……高浩……」

雨音に紛れるような小さな声で、囁く。その名前がどんな意味を
持つのか、みずほにはまるでわからない。

そう。この雨にかき消えるほど、それは小さい……。


木桧みずほがRailwayの入口に来ると、そこから店内の様子が
ちらりと見えた。

雨に濡れ、より重たい色になったRailway。店内から、景色を見るため
大きくとられたそのガラス越しに、有沢高浩の背中が見える。

「……?」

そして、彼と話す万里の姿。

「……笑ってる」

万里は楽しそうに高浩と談笑していた。万里がRailwayに来ていた
ことなど、全く知らない。

第一、万里はメールを送ったのに返事を返してこなかった。

「……(笑ってる……)」

あの人見知りをする万里が。
つい何日か前に出会った男と、楽しそうに話してる。

同学年の男子の話をするだけでうつむいてしまうような万里が。

高浩と、あんなに楽しそうに話している……。

「……」

急に雨足が強くなってきたのは、それからのことだった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「あはははっ、おかしい~」

屈託のない笑顔が弾けた。万里は楽しそうに、けらけらと笑って
いる。

「その公園ですごい広いんだよ。一周何キロもあるんだけど、
みんなめちゃくちゃ元気だから自転車必死で漕いでたんだけど、
ゴール地点が池の上で、そこが橋になっててな、差し掛かったら
もうヘロヘロでふらついてて」
「うんうん」
「友人の神保って馬鹿が、橋の柵に突っ込んで、柵ごと池に
落っこちたんだよ」
「ええー!」

口元に手を当てる仕草をした。万里は目を丸くして真剣に
話を聞いている。

「で、みんな慌てて池を見たら、神保は馬鹿だから池の中なのに
自転車から手放さなくて、バタ足で自転車漕いでるし」
「あははははっ」
「『溺れるー助けてくれー!』って叫んでるけど、それ以前に自転車
から手放さなきゃ沈むに決まってるって」
「おもしろいですねぇその人。あはははっ」

素直に笑ってくれる。綺麗なまるい目を細めて、涙まで浮かべ
ながら。
ずっと泣いていたのが嘘のように。

「なんか面白くって、今度はそれで涙が出て来ちゃいました」
「泣いた後はよく笑えるんだよ」

元々は明るい女の子なのだろう。笑顔がまっすぐで気持ち良い。
いつもそうしていればいいのに。

「万里ちゃんは笑ってる方がいいよ」
「……そう、ですか?」

不思議そうに。笑顔でいることが、何よりだと思うが。

「なんか、怖いです……」
「怖い?」
「ほら、今、泣いた後はたくさん笑えるって言ってたから。今度は
また、悲しい気持ちになるかと思って」
「それでもいい」

間髪入れずに、すぐ答える。

「それが普通なんだよ。俺もそうだった。逆に悲しい気持ちを押し
殺したり、ずっと根に持ってはダメだよ。そうやってると、いつか
溜め込んだもので誰かが傷つくかもしれない」

高浩は、ちらりとふたえの様子を気にした。ふたえは厨房で、何か
お菓子でも作っているようだ。バニラの匂いが漂ってきた。

その甘い匂いに安らぎを感じながら。

「言いたいことはその時に言った方がいい。泣きたいときは泣いた
方がいい。自分をコントロールできなくなってからじゃ遅すぎるから」
「そうですね。その通りだと思います」

もしかしたら、同じようなことを両親も経験したのかもしれない。
もしかしたら、ふたえも……。

しかし理解するにはまだ、人生が短すぎる。
何度こんな事を繰り返すのだろう。

俺達は何度、人を傷つけてしまうのだろう。
何度間違えてしまうのだろう。何度やり直せるのだろう……。

何度心から笑えるのだろう。

「万里ちゃんは帰って、お母さんと話をした方がいいかもしれない」
「あの……はい」
「……?」

万里は頷きながら、少し首を傾げた。恥ずかしそうに。

「すみません。同い年ですから、ちゃん付けはちょっと、恥ずかしい
かなぁ……とか……」
「あ、ああ。そういえばそうだ」

そういえばも何も、とても同い年に見えなくて……とは言えない。

「月方さん」
「有沢さん」
「……高浩でいい。なんか父親の名を呼ばれてるように聞こえる」
「じゃあ、私も……好きなように呼んでもらっていいです……」
「……万里ちゃん」
「……はい……高浩さん」

真っ赤になって、耳の辺りを掻きながら照れる万里を見てると、
どうにも高浩の方までこそばゆくなってくるが。

「あ……じゃあ、あの、話聞いてもらってしまって。ご迷惑おかけ
して、本当にすみませんでした」

立ち上がり、厨房のふたえと高浩に順に頭を下げる。万里は
深々と頭を下げたまま、何度も謝っていた。

ふたえがカウンターの方へ顔を出してくる。

「あら、帰ってしまうの? せっかくクッキーを焼いたのに。そうだ。
ラップで良ければ今包んであげるから、絵理ちゃんと食べて」
「え、いえ、そんな」
「遠慮しないで。絵理ちゃんなら遠慮しないわ」

比較する対象がちょっと失礼な気がするのだが。

ともかく、ふたえが包んだクッキーは万里の手の中に押し込ま
れた。それを片手に、傘を手に取る。(それもRailwayの置き傘だ)

「何から何まで、本当にすみません。今度何かお礼を作ります」
「いいからいいから」

あまりにもしつこく謝るので、さすがにふたえも困った表情で
手を振った。あまり優しいのも大変だろう。

しかし、これで一つ問題は解決した。

万里とみずほがそんなに親しく、そして父親のことで少し劣等感を
持っていたというのは意外だった。

万里は純朴だが、すこし気持ちが幼すぎるのかもしれない。
成績でも家事でも勝っているのに、みずほの才能を怖がって
いるのだろうか。

才能……という、目に見えないものに。
どちらかといえば、気まぐれで口が悪く、がさつでいい加減なだけ
だと思うのだが。どこをどう見ても、やはり万里の方が……。

まぁ、いい。全ては終わったし、もう考えても意味がない。

「それでは、失礼します」

戸口でもう一度こちらを向き礼をした。万里の丁寧さを見ても、
やはりみずほが姉の立場だとは考えられないが。

  ドン!

「きゃっ」



唐突に激しさを増した雨が、水煙のようなしぶきを上げる。
ざあああっと、複雑で大きな水音が押し寄せてくるように。

夕立に似た雨足。
万里は戸口に立っていた。驚いて、固まっている。

その目の前には、みずほが立っていた。
こちらも少し、こわばった表情で。静かに、足下を見下ろす。

焼けたばかりのクッキーが、雨の中、ぬかるんだ土の上に
散らばっている。急速に、雨の中でだらしなく崩れてゆく。

落ちたそれらを、万里は震えながら見ていた。

そして、真正面からぶつかったみずほも。

正面にいる万里に、何の言葉もかけようとしなかった。
何も。何故だろうか。

そして、ゆっくりと。
高浩に視線が移された。高浩と視線が交錯する。まるで定まら
ない瞳。雨に濡れた彼女のポニーテールが、どこか虚ろに見える。

そうだ。

彼女は言葉をかけないんじゃない。

ただ、言うべき言葉を探している。だから何も言えないんだと
気づいたときには。

「ごめんなさい!」

万里は、走り出していた。
声を上げるより早く。ばしゃばしゃと水を叩くような足音に、
みずほは唖然としたままだった。

どうしたのかはわからない。高浩にはわからないのだが。

ただ、Railwayの玄関には、水に濡れてふやけたクッキーの包みが
落ちているだけ。



泣きたくなるような空。

泣きたいのは俺だろうが!
高浩は声に出さず、心で叫ぶ。



――だから、言いたいことはその時に言う方がいいと言ったんだ。



(14)終

(15)へ続く
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