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2010年度クリスマス小説

2010年度クリスマス短編小説

毎度ご愛顧有り難うございます。
今年もこの日を迎えました。
僕は飛鳥先生に頼んでクリスマスツリーをチェストーッて
折ってもらおうと思います。空手一代誓った日から~♪
クリスマスイブが金曜の夜ってもうなんかアレだよね。
今日は渋谷で5時ふたりでサボタージュだよね。
今年のテーマ?
『Money』
あなたはMoneyで何を思い浮かべますか。
いつか奴らの足元にBIG MONEY叩きつけてやるですか?
浜田省吾ですか。
海は死にますか。

どうでもいいんだけど、竹内まりやの『すてきなホリデイ』
流れ過ぎだと思う昨今。いい加減どうにかしてくれんか。
『リア充爆発しろ』の歌とかにすればいいのに。







2010年度クリスマス短編小説
『Money』




@女
「いやっ! もう離して!」

@男
「なぜだ!?」

@女
「理由なんか……!」

@男
「……わかっているはずだと? そう言いたいのか」

@女
「あなたは……変わってしまった。私のような貧しく卑しい女とは
 違う……大理石の豪邸と、充実した仕事。華々しい日々の中で」

@男
「何も変わっていない。あの頃の僕と、僕達と! 変わったの
 はただ、あの星々だけだ」

@女
「南十字星……」

@男
「君がいなくなったあの日から、変わってしまったのは世界だけだ。
 僕達は何も変わっちゃいなかった。君を探し求めて、そして今、
 この腕の中にある。離せるわけがないだろう!」

@女
「……でも、あなたは……そのために、あなたの地位も、名誉も
 全財産も捨てることになるの……わかってるでしょ?
 あなたが胸に抱いているのは、許されざる愛……」

@男
「許されざる愛? 違う。愛は許しではなく、誓いなのさ
 誓いのために、何もかもを捨てた馬鹿な男なんだ」

@女
「ジョン!」


W20101223180658455.jpg

チャラララ~チャ~チャ~♪


やけに騒々しいオーケストラの音楽と同時に男女は接吻する。
そう。
あれが伝説にある接吻というものだ。

世の中にはあれを、両親以外とできる権利を所有する者が
ほんの僅かだけ存在するらしい。

その数は全地球人口の0.05%と言われ
彼らは絶滅危惧種としてレッドデータブックに記載されている。

そして俺は、その他99.95%の圧倒的多数派に属している。



街路はイルミネーションに彩られていた。
植樹一本一本にからみつく小さな電球が白く輝き、濃紺の夜空に
ぼんやりと綿花のように浮かび上がる。
59896251.jpg

風はなく、穏やかな街路には色とりどりの飾り付けを施した店が
立ち並び、客を招く声と足音でまさに、ごった返している。

行き交う人々の談笑。男女二人組。男女二人組。あっちも男女。
こっちにも男女。男女男男女男女……。

そしてこのクリスマス前夜に。


あっちでも接吻。

こっちでも接吻。


言うまでもなく夜になればもっとすごい接吻

接吻だけで済まず、
身分を明かすことなく入ることができる薄暗い建物の
サイケデリックな装飾を施された部屋に入り込み、
ヌルヌルする液体を身体に塗りたくり、
ゴム製の防護具を装着。
怪しげな機械をはじめ、蝋燭、果ては鞭や猿ぐつわなど
中世の拷問器具まで準備し、
二人きりでしか行えないエキセントリックで
悪魔的な実験すら行われるという。

それらの設備を提供する邪悪な建築物は、このキリストの誕生日に
合わせるように活気づいているというから禍々しい。

秘密に包まれた儀式を暴こうと撮影機器や盗聴装置を設置した
勇者もいた。だが、彼らのその勇気も、公安警察が刈り取っていった。

国家ぐるみなのか!
もはや地球上に安全な場所などなかった。

しかし形はどうであれ、それはある意味で愛と言える。
少なくとも孤独ではない。パピコが2本組である事と同じ程度には。

61.jpg



不思議だ。

本当に不思議だ。


地球人口の99.95%は、最近異性とお話したこともなく、携帯の
着信履歴は3ヶ月以上残っていて、メール履歴はスパムメールか
仕事関係のものだけで、
アドレス帳にはピザ屋の番号とアニメの
キャラの名前が入っている
のが普通だと聞いている。

それなのに。この街路はどこを見てもカップルだらけだ。

世界の隅々からこんな局所によく集まってきたなと感心する。

毎年なので薄々感づいてはいたが、どうやら俺の行く先々には
天然記念物級に少ないはずのカップルがわざわざ集まっているらしい。
そうでなければ絶滅危惧種のカップルがこんなにいるはずがない。

なんて運が悪いんだ!!

クリスマスに街を歩いていたら、たまたまカップルが集中している
場所に出くわしてしまった!!

そして奴等の不純な愛を見せつけられる。

高級バッグをねだる女の、まさに一世一代の演技。彼氏も騙されて
高いプレゼントをするのだろうが。
胸くそ悪い。

愛の物欲にまみれた側面が一番醜い。真実の愛など奴等には永遠に
理解されないだろう。金や物で人の心が買えると思ったら
大間違いだ。

あの映画のラストを見てみろ。ひどい駄作だったが、最後に
愛が金で買えないことを証明した。お前らにはそれが夢物語に
見えるだろうが、それがこの世の真理だ。
要するにカップルはみんな死ね。
裏返しになっちゃえ。


それにしても、どこからこんなにうじゃうじゃ沸いてくるのか。

いや、もしかしたら
これは全部兄妹かもしれない。
あの腕に抱きついているのも、一緒にショーウインドウを覗いて
いるのも、ちゅっちゅしている彼らも。

「な、なにくっついてきてんのよ!」
「くっついてきてるのはお前だろ」
「だって、回り見たらこうするのが普通っぽいし……か、勘違い
 しないでよ!
 恋人だと思われたらお互いイヤでしょ」
「俺は別に構わないけど」
「え……? おにい……ちゃん? 今なんて――」

雑踏の中で聞こえないが、彼らの中でそんなやり取りがあるのかも
しれない。

もしくは姉か。「おねえちゃんと一緒にクリスマスを過ごすのなん
て、イヤ?」
みたいに優しく問いかけられるとしたらどうだ。
なんて答えたらいいだろう。

ふふ、ははは。

映画館を出てから、俺はあてどなくふらふらと彷徨っていた。
世間は寒い。
年末の冷たいからっ風は物理的にも寒いが、精神的にも寒い。

俺がいったい何をした。

毎年毎年、普通に働いて過ごしているだけだ。
品行方正で、邪な考えなど何一つ持っていない。

暇つぶしに入った映画館で、たまたま上映していたのが恋愛映画で
しかもしれが糞つまらなかった上に回りがカップルだらけで、
一応最後まで見たこの俺の忍耐力は、表彰されてもおかしくない。

ヒロインがバナナの皮を剥いている時になぜか泣き出した前の
カップルの女の頭を、チュロス(シナモン味)で殴ってやろうか
思ったのに自制した。

こんな俺に。持ち家も車もなく、貯金も少ししかない俺に。

ああ、何か。何かないのか。俺の人生に、転機は来ないのか。
クリスマスに。この聖なる夜に。

ただ、こんな。幸運と愛に見放された男に、救いはないのか。


そんな時だった。

乾いた冷たい風にあおられて、何処からか飛んできた紙切れが
俺の顔にぶつかってきた。

@俺
「ぶぁっ……な、なんだこれ……」


チラシのようなものか?
10cm程度の長方形のその紙の内容に、視線を落とす。
周囲の雑踏が一層騒々しさを増したような気がした。

衝撃音が聞こえたような気がした。感情が昂る音。

俺の体が、明らかに寒さとは別の意味合いで震えている。


これこそが、聖なる夜に俺に与えられた転機……!?

その夜、俺は一睡もできなかった。







明けて。

クリスマス当日である。
よく晴れ渡った青空は、どこか成功の門出を祝福しているかの
ようだ。

俺は昨日拾ったチラシにもう一度視線をやり、それを大切に
折り畳んで上着のポケットに入れた。

@俺
「ここか……」

時刻は朝の10時。土曜日の朝を、こんなに清々しく迎えたのは
久しぶりだった。
どうしても拭えない、じっとりと湿っぽい緊張を和らげてくれる。

見上げたビルの6階。そこが目的の場所だった。

もう一度その看板を眺め、そして確かめるような思いでチラシの
中身を反芻する。


@俺
【人生大逆転の大チャンス! 貧乏なあなたも少ない投資で
大金持ちに! 1万円からでもできる最強圧倒爆熱究極投資術!
見よ!! 残高は赤く燃えている!!】
か……」

残高が赤く燃えてはいけないような気がするが気のせいだろう。

そう。要するにつまりだ。

@俺
「金だ」


金。ドル。ユーロ。ゴールド。ギル。マッカ。
要するにマネー。

マネーだ。金だ。

所詮人生は金。金さえあれば大体のことは上手く行く。
ド汚いと思われるかもしれないが、それは真実である。

昨日見た映画では、青年実業家の男は財産をなげうって
恋人を求めたが、あれはつまりなげうつ財産があるから
バナナの女も膝を叩いて、『ようし、一丁キスしますか』
みたいな勢いが生まれたという説である。他にどう考えろと
言うのか。

全財産200円のニートが、全財産をなげうつ覚悟を見せても
母親ですら泣いてはくれないだろう。いや、別な意味で泣く
かもしれないが。


そう。考えれば考えるほどに、何をすべきかは明白なのだ。

金がないってのはどういうことか。
魚のいない釣り堀に糸を垂らしているようなものだ。

愛や幸せを手に入れたければ、金を稼ぐのが一番早いという
ことだ。金を持っていると女が寄ってくる。そうすりゃいずれ
真実の恋だとか愛だとかにヒットする。
魚がいない釣り堀じゃ何時間釣っても釣れるわけがない。

そう。貧しさはすべてを奪う。クリスマスを人並みに楽しめ
ないのも間違いなく金がないせいだ。
人間の意志なんて金があればどうにでも出来るし、愛なんてのは
その後についてくればいい。その方が手っ取り早いのだ。
間違いなく。

人生をひっくり返すためには一攫千金しかない。

@俺
「よし、行くか」

ビルの6階。
弾む気持ちを抑えながら、『まんた金融マネジメント』という表札が
掛かったドアを開いた。

@俺
「すみません」

@男
「いらっしゃいませ」

店内は思いのほか普通で、銀行のようにさっぱりとした内装だった。
最初に応対したのは、カウンターの向こうにいる男性店員。

@俺
「チラシを見てきたんですが」

@男
「ああ。では少々おかけになってお待ち下さい。社長ー!」

詐欺かなにかかと不安に思ったが、本当に拍子抜けするほど何もない。
男性社員らしき人物も、スーツ姿の無害そうな印象だ。

社長を呼ぶというのでついたての向こうへと消えたその男性社員の
勧めに従って、椅子に腰掛ける。

もう一度チラシを開いて、眺めながら。

……

数十秒後、女性が目の前の椅子に腰掛けるのがわかった。
チラシに視線をやっていたので、視線の端に足が映ってからだが。

@女
「はーい。お待たせしましたー。そのチラシをご覧になって来て
 いただいたんですね。ありがとうございます」

@俺
「ええ、いや、どうも。それで――」

喋りながら視線を上げる。

@女
「はい。どうかなさいましたか? 私の顔がそんなに絶世の美女
 だからって、見つめられると1分当たり250円を請求しちゃうかも」

@俺
「……お……お……ま……え……は……」

@女
「あら、どうなさったんです? 緑色の汗なんて流して」

@俺
「おまえはーーーーーー!!! あ、あのクリスマスの!!」

@女
「……?」

@俺
「忘れたふりをするな!! 俺に見覚えがないとは言わせんぞ!?」

スーツを着た女が、思案げに右手で口元を抑え、眼を細める。

@女
「……まさか……あ……あなた……」






~~~~~~~~~~~~~~~


~~1年前~~


@俺
「くそっ、こっちはもうダメだ!! 囲まれてる!!

@女
「ど、どうすればいいの!?」

@俺
「くっ……こうなったら、俺が奴らを引きつける。お前はその隙に
 地球防衛隊本部へ急ぐんだ!」

@女
「そんな! 無茶よ!」

@俺
「だが、無茶でも今はそれしかない! お前は『アダム計画』に必要な
 因子を持つんだ。奴らに奪われれば、地球は終わる!」

@女
「……だからって……あなたを置き去りにしてなんて……」

@俺
「時間がない! 走るんだ! 行け!」

@女
「!!」

@俺
「メリークリスマス」

@女
「いやあああああああああああああああああああああ!!」



~~~~~~~~~~~~~~~



@女
「あの時、あなたは死んだとばっかり……」

@俺
「毎度毎度わからないが、今の回想シーンは一体どんな脈絡があっての
 ことだ」

@女
「まさかこれがゼーレの意志?

@俺
「誰だ」

@女
「って、よく見たら赤の他人じゃないですかー。全く人騒がせな」

@俺
「一人で勝手に勘違いしているだけだろ」

@女
「大体、あいつは私の計画通りあそこで射殺されたはず……

@俺
「お前が黒幕かよ。
 いや、そうじゃなくて、毎年のことながらだが一体
 なぜお前がここに。最初に会った時は床屋、次に会った時は医者
 去年会った時には水商売。で、今年は金融詐欺か」

@女
「詐欺じゃないです失礼な! 一体何を根拠に詐欺だなんて!」

@俺
「いや、モロ俺の主観で。お前が関わってるとロクな事にならんし」

一体どういう巡り合わせだろうか。
クリスマスに同じ女に何度も出会うなんて。


そもそも、それぞれを思い返してみれば。この女はいつもいつもロクな
事をしていない。おかげで死にかけたこともあったし、財産を全部
奪われる寸前にもなった。通報すれば確実に逮捕出来るだろう。

俺は右手でこっそり携帯電話を取り出し、手探りでダイヤルを押そうと
した。
早い内にここから逃げ出して、布団を被って寝てしまうのが
一番だ。


と、その時。

@男性社員
「社長? どうしました?」

ついたての向こうから、男性社員が声を掛けてくる。社長? 
社長……。

@女
「なんでもないの。ありがとう灰原君」

俺は、少しだけ声をひそめて社長と呼ばれた女を睨み付ける。

@俺
「おい。社長ってどういう事だ」

ダイヤルを一旦中断して聞く。

@女
「社長って事はつまり会社で一番偉いのよ。アリ社会で言うと女王。
 マグロ社会で言うと天然物。マックで言うとくるくる回るmの字」

@俺
「なぜだ。また犯罪行為か」

@女
「何言ってンです? 勿論働いて稼いだお金を、自分で考案した投資術で
 運用した結果、巨万の富を得ることに成功したこの私に向かって。
 ホホホ」

@俺
「……なん……だと……?」

@女
「お金がある生活っていいですよー。まず手始めに小学校時代の同級生を
 全員呼びつけて、ひざまづかせて札束でほっぺたをひっぱたいて

@俺
「お前の小学校時代に何があった」

@女
「玄関が暗かったから1万円札に火をつけて
 『どうだ明るくなつたろう』
 て言ってみたり」

@俺
「社会の教科書で見たぞそれ」

@女
「まぁ、お金を得る前は色々世の中を呪ったり、物欲にまみれた愛とか
 振りかざすカップルとか爆発しろとか思いましたけど、金を得てしまえば
 人間なんて金の力で自由に出来ますしー」

@俺
「なんてひどい奴なんだ。金で人の心を自由にできると思っているなんて」

@女
「へー。じゃあ、わざわざクリスマスの日にそんなに大事そうにチラシを
 折り畳んで持ってくる人は、そうは思っていないのですか? うりうり

@俺
「くっ……! 俺は純粋に、金儲けとか素敵やん! って……」

@女
「なるほどなるほど。まぁいいでしょう。ここまでの失礼千万な物言いを
 全て忘れて、とっておきの儲け話を教えてあげても良いですけど」

@俺
「いや、別にいいや」

@女
「……」

@俺
「…………」

@女
「………………え」

@俺
「いや、多分詐欺だし。もうなんか、絶対失敗するし」

@女
「……」

@俺
「……」

@女
「……ふっ」

@俺
「!?」

@女
「私を甘く見ないで。この部屋は全てオートロック。日本語で言うと
 岩自動」

@俺
「くっ、ドアが開かない!」

@女
「話を聞くまでは帰さない……というか話を聞いた上で有り金全部を投資させる
 まで帰さない……! この『まんた金融マネジメント』高収益の秘訣その1!
 必殺の≪グレート・アルティメット・バインディング≫

@俺
「軟禁じゃねーか!!!」

@女
「失礼な! 『お客様の投機のチャンスが失われることを
 強制的に防ぐ手段』です」

@俺
「貴様が儲けるチャンスを失わないための手段だろーが!」

@女
「いいですか。よく聞いて下さい」

@俺
「何だ」

@女
「この会社のモットーは、『一挙両得』です」

@俺
「はぁ」

@女
「お客様が儲けられた場合はその儲けを吸い上げ、お客様が損された場合でも
 私たちは得します。これが一挙両得システムです」

@俺
「死ねよ」

@女
「さぁ、投資したい気分がどんどん盛り上がってきたところで」

@俺
「盛り上がってない盛り上がってない全然これっぽっちも」

@女
「さて、ここにあるのはあなたの預金通帳です」

@俺
「……は?」

@女
「んーあなたの貯金額を見てみましょう。どれどれ……ほほー」

@俺
「どうやって手に入れた!!」

@女
「あなたの足下に誰かの忘れ物だと思われるバッグが置いてあったので」

@俺
「俺のだ!!」

@女
「で、この貯金120万円全額を投資したいと。なるほどなるほど」

@俺
「おいちょっと待て!! それは今月の家賃や生活費も入ってんだ!!」

@女
「甘い!!」

@俺
「!?」

@女
「……家賃? 生活費? 甘すぎてスイート。ふりむけば日本海」

@俺
「……何が言いたい」

@女
「家賃や生活費がなんぼのもんですか! 明日億万長者になろうと志す
 あなたに、守るべき家や取るべき食事があるんですか!!」

@俺
「!」

@女
「家なんかなくたって路上で生活すればいいじゃないですか!! 食事なんて
 取れなくたって1ヶ月ぐらい生きられます! 河川のゴミを漁ったら
 いっぱいお金が出てくるって大阪市環境局の人も言ってます!!
 それなのにこのご時世に、まさかたった120万円を惜しんで……
 確実に、安全に、億単位の大もうけができるのに!
 この手法に、あなたは全く興味がないと!?
 あなたはお金を儲けて、ねこ耳美少女メイドのほっぺたをお札でひっぱたき
 ながら、マジックハンドでミニスカートをめくりたくないんですか!?
 めくりたいですよね!? めくりたいはずです! 」

@俺
「め、めくりたい……」

@女
「むしろめくってほしいはずです!」

@俺
「めくってほしい……」

@女
「その状況を風紀委員に見られて
『ハレンチな!』って言われたいはずです!」

@俺
「言われたい!」

@女
「でしょ?」

@俺
「うーん……興味が沸いてきたかもしれない」

@女
「そうでしょうそうでしょう。いよっ男前! その心意気が男前!」

@俺
「いやー、で、儲かる金融商品って例を挙げるとどんなの?」

@女
「そう来ると思いました! いやー全くお客様は先見の明があるなー
 すごいなーあこがれちゃうなー! で、
 今絶賛オススメなのがこの金融商品。アラビア海を根城にする
 ソマリアの海賊事業への投資!
 なんと月20%複利! 計算すると
 たった2年で億!!」

@俺
「ちょっと待て」

@女
「はい?」

@俺
「どういうことよ?」

@女
「なにがです?」

@俺
ソマリアの海賊事業って」

@女
「ええ。つまり、ソマリア海賊事業株式会社のスポンサーになって、彼らと
 一緒にタンカー襲おうよっ! と」

killthemall.jpg

@俺
「襲うか!!!」

@女
「何で襲わないの!?」

@俺
「そこ不思議なのかよ!?」

@女
「マジですっごい儲かってるんですよ? 札束風呂ですよ? ほら!」


P1.jpg


@俺
「これトルマリンブレスレッドの詐欺だろうが!!
 昔のエロ本で見たぞこの男!!
 仮に逮捕されなくても下手すりゃ殺されるぞ!」

@女
「こっちの写真なんかほら、AK持った革命戦士さんが『アデン湾で僕と
 握手しよう!』
って。見て見てほら」

@俺
「見ない見ない!」

@女
「ありゃー、お気に召しませんかー」

@俺
「お気に召すか!!」

@女
「じゃあ、こんなのはどうでしょう? こっちは少しリスクが高くて、
 その分利率も高いんですよ」

@俺
「リスクが高いってのは? 海賊の時点でも相当リスキーだったが」

@女
「これはそういうリスクではないです。もうちょいなんていうか、
 取引の上でのリスキーさ加減って言うんですかね? 商売ってほら、
 安く買って高く売るってのが基本じゃないですか」

@俺
「うん」

@女
「で、やっぱり安く買うってのは難しいですし、高く売るってのも
 ある意味ライバルとの競争になるし、それはもう熾烈な感じになる
 わけじゃないですか。そこは知的なマネーゲームが展開されるんです」

@俺
「確かに」

@女
「いいでしょう知的。知的美女

@俺
「いいね」

@女
「黒ぶちめがねで黒髪ロングで白ワイシャツの美女に毎朝コーヒー入れて
 もらう生活、いいでしょう?」

@俺
「いいですね」

@女
「オフィスワーカーで後輩には切れ者とかやり手とか思われてるんだけど、
 アフターで二人きりになると子猫のように従順になっちゃうんですよ?」

@俺
「素晴らしい」

@女
「もちろんマジックハンドつきで。札束ビンタで」

@俺
「マジか。そのマジックハンドでものすごい事をしても大丈夫なのか」

@女
「つまむなり入れるなり額のほうにメガネをずらして
 『メガネどこメガネメガネ』ってやるプレイすら可能」

@俺
「なん……だと……っ!」

@女
「興味が沸いてきましたか?」

@俺
「沸いてきた」

@女
「その意気です! かっこいい! 私、なんだか惚れちゃったみたい

@俺
「いや、それはいい」

@女
「またまた遠慮しちゃって」

@俺
「してねぇ」

@女
「まぁその話は後にして、気が変わらないうちに。ではこちらの契約書に
 サインしてください」

@俺
「えーとここでいいの?」

@女
「そうです。で、そこに印鑑押して捨印をここに」

@俺
「えーと何々」

@女
「いや内容はサインしてからお読みになっても」

@俺
「『メキシコ麻薬組織ガルフカルテルへの出資。
 密輸品、コカインほか』」


Traffic.jpg


@女
「……」

@俺
「……『出資者は現地で経営状態を視察し、直接指導、資金援助、場合によって
 は、銃撃戦に参加する。敵に拉致された場合は情報を漏らすこと無く
 速やかに手榴弾で自爆すること』」

@女
「……」

@俺
「……『なお、この出資者は連邦法その他により処罰される恐れがあることを
 本人が了解済みであり、代理店とは何の関係もありません』」


@女
「……」

@俺
「……」

@女
「……」

@俺
「……」

@女
「……外、星がきれい」

@俺
「昼だ」

@女
「……」

@俺
「……これはつまり、アレか。武装麻薬密輸組織に出資しろと」

@女
絶対安全ですって」

@俺
「どこに安全な要素がある」

@女
「ここですよほら。ここんところに小さく」

@俺
「なんだ」

@女
『もし特殊部隊と銃撃戦になった場合は、武装組織から吹き矢を貸与する』って」

@俺
「吹き矢でどう安全に乗り切れるんだよ!! コイサンマンか俺は!!」

@女
「ええー練習してないんですか?

@俺
「するかっ!!」

@女
「じゃあ、ちょっと利率は下がりますけど拳銃一丁にしていいですから」

@俺
「特殊部隊と拳銃一丁で渡り合えるか!!」

@女
「スティーブンセガールはやってたもん!!」

@俺
「あれは映画だ!!」

@女
「多少のリスクを恐れてどうするんですか。今は攻め時ですよ!」

@俺
「明らかに攻めすぎだろ!! もうちょっと普通のは無いのかよ!」

@女
チッうっせーな。
 えーと、お客様の要望どおり、1~2年で億単位っていうと……」

@俺
「いや待て、その条件がまずかったのかもしれん」

@女
「といいますと」

@俺
「もうちょっと利率は落としていいから、せめて命の危険が無いのを」

@女
「難しいですねぇ」

@俺
「難しいか?」

@女
「えーとこれは駄目。これは無理。これは……」

@俺
「……」

@女
「これは駄目……これ……肉塊……これは……東京湾……蜂の巣

@俺
「……もういいわ……もう本当に……」

@女
「あ、あったあった。これなんてどうです? 間違いなく安全」

@俺
「……どんなんだよ」

@女
「浜辺ファンド」

@俺
「……浜辺ファンド? なんだそりゃ?」

@女
「浜辺に漂着したものを売って儲かるファンドです」

@俺
「それ……儲かるのか?」

@女
「全然」

@俺
「駄目だろ」

@女
「でもでも、ノーリスクです!」

@俺
「ノーリターンじゃねえか!」

@女
「ノーリターンなんて! 
 たぶん処分費用のほうが高くつきます!

@俺
「ノーリスクですらねぇし!?」

@女
「だけどこれは、青い海と白い砂浜を守って綺麗な美しいビーチを
 作ろうっていうすごいエコでナチュラリズムでグリーンなですね。
 自然を守るってのはエゴイスティックな欲望とは無縁の高尚で崇高な
 志なんです! それはもう」


@俺
「いやそれは解るけども」

@女
「エコを大切にする人って素敵……女性は綺麗なものが大好きですし、
 そういう活動に身を投じている人なんてきっと心が綺麗なんだろうなー
 ようし一丁キスしますかーみたいな展開もー」

@俺
「そうかなぁ」

@女
「綺麗になったビーチには一杯人が来て、たくさんの笑顔。夏の思い出。
 そしてひしめくカップルの一夜の情熱

@俺
「絶対協力しねぇ」

@女
「ええー」

@俺
「なんで俺が身銭を切って、カップルの一夜の情熱とやらに協力せにゃ
 ならんのだ!!」

@女
「そうだ! お客様はそれを覗かれてはどうでしょう!?
 これで一挙両得!?」

@俺
「馬鹿かお前は!!!」

@女
「まぁそうですよね。そもそもエコとかクソッタレた物に投資とかありえません
 よね。むしろ死ねって感じです。今、世界の最新流行は工場毒水全放流ですよ。
 金が稼げれば基本的にどうにかなるって中共が言ってますし

@俺
「2分前と言ってることがコロコロ変わるなお前」

@女
「じゃあこんなのはどうです? 北朝鮮の核密輸ファンド

@俺
「絶対嫌だ」

@女
「ええーでも、将軍様の肖像が入った赤いきれいなバッジ貰えるんですよ?
 裏に『無慈悲な謝罪要求』って掘ってあるとっても素敵なバッジで、
 これを見たら女性も思わず律動体操しちゃう! みたいな。ほらほら欲しいでしょ?」
o0800060010887694443.jpg

@俺
「いらんわ馬鹿たれ!」

@女
「それじゃ、これなんてどうです? 俺俺ファンド。一人暮らしの老人の」

@俺
「やめんか!!」

@女
「じゃあシロアリファンドは……」

@俺
「同じだ!!」












@俺
「……疲れた……」

いつのまにか、辺りは夜になっていた。

@俺
「6時間もこんな……無駄な時間を過ごすなんて……」

今日は土曜日。昨日よりもさらに多くのカップルが、楽しげに行き交う。

街路の中心には大きなクリスマスツリーが点灯している。この輝きも、
今日。12月25日をもって、終わる運命。てっぺんに飾られた星も。
これが見納めになる。

思えば、あっという間の一年だった。

そして、一年の最後に、
ほんの一時。

たった一時だが、女の子とたくさん話が出来たんだから、ポジティブに
考えればそれも悪くなかったのかもしれない。

あくまでもポジティブに考えれば、だが。


フッ……何を考えているのか。

あんな女と話していた時間が、楽しかったはずなんか無いのに――。


@俺
「……」

俺は期待していたのかも知れない。
こんな特別な日に、彼女に会うことが出来るかもしれない。
そんな事を……無意識のうちに。


もしかして、これはクリスマスが起こしてくれた奇跡、なのか?


@俺
「おい」

@女
「……なに?」

@俺
「意味不明なモノローグ呟いてないで、ドアのロックを解除しろよ」

@女
「ふあぁ~だって、早く決めてくれないから暇で。
 じゃあ、この『さいたま遷都ファンド』
 120万円投資する? 投資しようそうしよう! 
 未来の新宿は大宮だー銀座は春日部だー」

@俺
「お前ならするのか」

@女
「するわけないでしょ」

@俺
「よかった。意見が一致した



@女
「ねぇねぇ。私たちって、実は相性がいいのかもしれないですね


俺は、その言葉に小さく微笑んだ。

微笑んで――そして――




右手で携帯電話のダイヤルを押した。


<END>
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